Lesson3-3 お散歩のためのしつけ

お散歩のために

前回のLessonでは屋内で安心して暮らすためのしつけについて説明しました。今回は屋外、主に犬を散歩に連れて行くときのための方法について解説します。

社会化期に頻繁に連れ出しているなら、犬のお散歩でそこまで困ることはないでしょうが、それでも事前にしつけておくべきことはあります。それは動じないことです。散歩中であれば人に触れられたり、大きな音を聞くのも日常茶飯事ですから、じっと落ち着いていられることが大事です。そのような状態を維持するために、屋外に連れ出すためのしつけを行う必要があります。

ボディコントロール

触られただけできゃんきゃん吠えるようでは外には出せません。まずは飼い主の手でボディタッチに慣れさせましょう。

Lesson3-3

犬の喧嘩で怪我をしやすい場所、たとえば耳や足、鼻の先、それに尻尾などはなかなか触れさせてもらえません。最初は背中や頭を撫でながら、褒め言葉をかけたり小さなおやつを与えたりして慣れさせます。抵抗のそぶりを見せなくなると、次のステップへ進む段階です。今度は本能的に嫌がる場所にも手を伸ばすようにしましょう。

音に慣れさせる

外の世界は音であふれています。社会化期に頻繁に連れ出していた犬なら、多少は外の騒音にも慣れているはずですが、最初からばっちり適応してくれるわけではありません。ちょっとした音で大騒ぎする可能性は大いにあります。

そんなときは、犬がどんな音に驚いたか逐一チェックしておくことです。自動車のエンジン音、子供の叫び声、突然の雷……そういったものに驚いたという事実があれば、対策は可能です。音源をあらかじめ録音しておいたり、CDや動画サイトから似たような音を選んだりして、小さな音量で聞かせながら徐々に馴らしていきます。

大切なのは、いきなり音量を大きくしないこと。わたしたち人間と同様に、犬も苦手なものには敏感に反応してしまいます。嗅覚ほどではないにせよ、犬は強い聴覚の持ち主ですから、鋭敏化したところに大きな音を浴びせかけるのは苦痛やストレスの元になります。まずは小さな音から聞かせ、動じなければご褒美を与える……という要領で根気よくしつけていきましょう。

変なものを飲み込んでしまわないために

犬は散歩中に様々なものを拾い食いします。これは犬の習性で、完全になくすためには狩猟本能を忘れてもらうほかありません。つまり、そうそうやめさせられないのです。でも、犬に食べさせてはいけないものは世の中にはたくさんあって、場合によってはお腹を壊したり、死にいたることもあります。

重要なのは拾い食いを事前に防止すること。うっかり口に入れたものを無理やり吐き出させるのは、あまり有効な方法ではありません。食べ物は飼い主が手から与えるもので、それ以外のものは口にしてはいけない、という認識を徹底させる必要があります。

訓練方法はいくつかありますので、有名なものを紹介しましょう。1つは、犬が落ちているものに興味を示したら、合図の言葉と一緒に引き止めること。もう1つは正の強化子を用いる方法です。道端にわざと興味を引くものを落としておき、犬が落ちているものを無視したらご褒美をあげます。この2つの方法を併用しつつ根気よくしつけることで、犬は次第に拾い食いをやめるようになります。

口に含んだものを吐き出させる訓練も大事です。この訓練のためには、犬が口に何かを含んでいる状態を上手く作りましょう。そうして、合図の言葉(例:出せ)をかけて、犬がものを吐き出したらご褒美を与えるという方針でしつけを繰り返します。合図の言葉で犬が異物を吐き出すようになれば、たとえば人やものに噛み付いてしまったときなども、合図1つで口から引き離せます。

もしこの方法が難しいようであれば、Lesson3-2で学んだ「待て」や「お預け」を活用して、犬が落ちているものに反応を示した瞬間に命令を出すというしつけでも良いでしょう。また、犬が嫌いなものをダミー用の餌として設置し、「拾い食い=美味しくない」の図式を覚えさせるのも手です。

飛びつき癖・噛み癖

散歩中に犬が見知らぬ人に飛びつき、あまつさえ噛んでしまったら……? 世の中には犬の行動が原因で裁判が起こった事例もあります。他の人や犬に対する紳士的な行動をしつけるのも飼い主の義務。飛びついたり噛んだりしないよう、工夫を凝らしてみましょう。

まず、飛びつくのが好きな犬に対しては、飛びつこうとした瞬間に「待て」や「座れ」の合図を出し、じっとしていればご褒美をあげるという方針でいきましょう。これが基本方針となります。

もしそれでも飛びつき癖が直らない場合は、サプライズを与えるのが良いでしょう。犬が飛びかかってきたら、飼い主のあなたは徹底して無視を決め込みます。何の反応も得られないと分かった犬が落ち着いて離れていくと、その瞬間にご褒美を与えます。飛びついたら相手をしてもらえないということを教え込むわけですね。

噛み癖についても「待て」や「座れ」が有効ですが、飼い主を噛んだ瞬間に弱化の刺激を与えるのも良い手です。たとえば、遊びの最中に噛まれたときのことを想像してみてください。噛まれた瞬間に大声を出して遊びを中断すると、犬は噛めば遊んでもらえなくなるという流れを理解します。このときも噛むのをやめた瞬間にすかさずご褒美をあげれば、しつけの精度を上げられるでしょう。

しつけの基本は望ましい行動をとった瞬間に褒めること、そこを見誤らなければ理想的なしつけも可能になります。しかし、これらの問題行動は犬にたまったストレスが原因となっていることも多いようです。次の講座では犬がストレスをためないような、快適な住環境の作り方を見ていきましょう。