Lesson2-4 犬の問題行動

しつけが行き届いていても、犬はしばしば問題行動を起こします。それらは何が原因で発生しているのでしょうか?

子供に吠える

子供嫌いの大人がいるように、子供嫌いの犬もいます。人間の場合は様々な事情があるでしょうが、犬の場合は比較的単純な理由から、子供に対する苦手意識が形成されるようです。

Lesson2-4

子供は行動が読めません。急に大声を出したり、突然動き始めたり、泣き出したり、手加減なしに顔や尻尾を触ってきたり……犬は子供の突飛な行動を警戒し、警告のために吠えてしまうのです。子犬の頃に子供に対する苦手意識が染み付いてしまうと、成犬になっても吠え癖が残ることになります。

部屋を荒らす

飼い犬に部屋を荒らされた! という経験をお持ちの方も、ひょっとしたらいらっしゃるかもしれませんね。家具をかじられたり、カーテンを引っ張られたり、植木鉢が倒れていたり……帰宅するとまるで台風が吹き荒れたようになってしまうのです。普段は落ち着いているのに、なぜ留守中にだけイタズラっ子になるのでしょうか?

留守中に部屋を荒らす犬は飼い主と離れていることに耐えられないもろい心の持ち主なのかもしれません。分離不安分離関連障害など呼び方は様々ですが、犬種や幼少期の生育環境次第では、飼い主不在の状況に耐えられず、周りのものに当たり散らすという状態になるようです。この場合は病気ではありませんが、一度成犬になってしまうと対処するにも骨が折れます。

このような場合は、まず犬のストレスを積極的に取り除き、なるべくそばにいて上げられるようにしましょう。また、留守中の様子を動画で撮影し、留守番させられる時間の限界をきちんと見極めることが大事です。外出を極力控え、犬のそばにいてあげることが一番の対処法になります。

無駄吠え

犬は誰もいない空間に向かって吠えることがあります。また、一度でよさそうなものなのに、ずっと吠え続けているということも。このような問題行動をわたしたちは無駄吠えと呼びますが、実は無駄だと考えているのは人間だけかもしれません。

無駄吠えの原因はストレスや飼い主との別離の不安、恐怖など様々ですが、いずれも「なにかが起こっている」と考えるのに十分なものです。老化によって認知症が進んでいる可能性もありますし、飼い主になにか要求するため吠え続けているとも考えられます。無駄吠えが多いなと思ったら、まずは犬の状態を正しく捉えること、それからしつけの方法を考え直すことが大事です。

リードを引っぱる

散歩中に犬がぐいぐいリードを引っ張り、飼い主が引っ張られて追いすがるように散歩をする。ちょっとみっともない光景ですが、珍しいことではありません。犬は刺激を求める動物ですから、外の世界へ向かう気持ちがリードを引っ張らせるのでしょう。でも、飼い主にとっては怪我の元ですね。

犬の好奇心からくる行動ですから、病気ではありませんが、リードを引っ張らないように飼い主の方でしつけを工夫する必要があります。その具体的な方法については、後のLessonで学んでいきましょう。

食べ物以外を飲み込んでしまう

食事が足りていないわけでもないのに、犬が部屋の中の異物を飲み込んでしまう。このような異物誤食はわりとありがちなことで、強いストレスが原因になっていることが多いようです。部屋を散らかさない、というのは大切なことですが、その前にストレスがたまっていないかどうかチェックしてみましょう。

急に排泄出来なくなる

とうとう認知症になってしまったのか、と思うのはまだ早い。犬がトイレで排泄できなくなるのは強いストレスを抱えている証。変なところでうんちを見つけたら、まずはストレスを疑いましょう。

わざと足を引きずる

犬が足を引きずるのは骨折や病気が原因なので、すぐに動物病院へ連れて行く必要があります。でも、せっかく連れて行ったのに体には問題がないと言われてしまったら?

実は犬も仮病を使うことがあります。とはいえ犬は会社にも学校にも行きませんし、なにか嫌なことから逃げるために足を引きずるとは考えにくいのです。では、どうして仮病を使うのでしょうか。

飼い主は犬の容態に気をつけていますので、足を引きずっていれば当然、心配をします。実はこれが犬にとってはご褒美になることがあるのです。もう一度飼い主に心配されたいから、まるで足を怪我したかのように振舞う犬。そう考えるとなかなか健気ですが、かといっていつまでも足を引きずられても困りものです。しつけのやり方を考え直す必要があるでしょう。

このように、問題行動にご褒美を与えてしまうと、犬はそれを繰り返してしまうことがあります。行動の頻度が上がることを行動学の用語で強化というのですが、何が強化を促すご褒美(強化子)にあたるのか、よくよく考えなければなりません。うっかりご褒美を与えてしまうと、犬はどんどん問題行動を繰り返すようになってしまいます。これは犬のしつけに関しても重要な要素ですので、しっかり覚えておきましょう。