Lesson1-4 犬の体の特徴

犬の体の特徴・感覚器官

優劣のはっきりした犬の感覚器官

最も優れた感覚器官は鼻!

テレビドラマやドキュメンタリーで麻薬探知犬が活躍しているのを見たことのある人もいるでしょう。犬は優れた嗅覚の持ち主です。その鋭さは人間のおよそ1000倍~1億倍、しかも匂いから様々な情報を嗅ぎ取れてしまいます

Lesson1-4

犬の鼻粘膜には10億個近い嗅覚細胞が存在することが分かっています。人間は約5000万個ですから、その数なんと人間の20倍。嗅粘膜で取り込んだ匂い物質は嗅神経を刺激し嗅球と呼ばれる脳の部位に達することで情報処理されますが、この嗅球の大きさは人間の場合約1.5グラムです。一方、犬は中型犬でも6グラム。脳の大きさは人間の1/10ほどとされていますから、脳に閉める嗅球の比重もおよそ40倍です。

さらに、匂いの階層化という特殊能力のおかげで、複数に匂いが交じり合っていても個別に嗅ぎ分けられることができる、と言われています。この優れた機能が犬の嗅覚を支えているのです。

人間には聞こえない音も聞き取れます

自然界にはさまざまな周波数の音が存在しますが、人間が捉えられるのは16~20,000Hzの範囲まで。日常会話の周波数が200~4000Hzです。基本的には周波数が高いほど高音として聞こえるとお考えください。

一方、犬は犬種や体の大きさによる聴力の差はあまりなく、65~50,000Hzの範囲の音が聞き取れるようになっています。犬の方が人間より感度が良いようですね。ちなみに、最も犬にとって感度の良い周波数は8,000Hz前後で、人間には聞き取れない高音も聞き取ることができます。

この特性を利用したものが犬笛です。ただ吹いただけでは周波数が高すぎて人間には聞こえませんが、犬たちは聞き耳を立ててくれるのです。ドッグトレーナーの皆さんはこの犬笛を上手く使いこなして訓練を行っています。

視覚は比較的未発達?

嗅覚や聴覚と比べたら優れているとは言いがたいのが「視覚」です。犬の眼は近眼で、100メートルも離れると人間の顔の区別がつかなくなると言われています。また、1メートル以内のものもはっきりとは見えていません。人間にたとえるなら、近視と遠視を両方患っているようなものでしょうか。

また、犬は赤と緑を区別できません。そのことから「犬は色盲」という迷信がまかり通っていましたが、厳密には色盲ではありません。人間の網膜には赤・青・緑色を識別する3種類の視細胞がありますが、犬にはこれが青と黄色の2種類しかないのです。青と黄色の区別はついても赤と緑では分からない、その理由は視細胞にあったというわけです。

甘いものが大好き、でも複雑な味が分からない

味覚といえば、長らく甘味、酸味、苦味、塩味からなる4種類の基本味から構成されるものだと考えられていたのですが、最近はその枠組みも少しずつ変動しています。1908年、とある日本人がだし昆布の中からグルタミン酸という「うま味物質」を発見しました。それからおよそ100年近い時が流れ、舌の味蕾にある感覚細胞にグルタミン酸受容体が発見されたことで、第5の基本味としてうま味が加わりました。現在ではここに「脂味」を加えるべきではないか、という議論が行われています。

人間の味蕾はおよそ9000~10000、でも犬の味蕾は1700ほどしかありません。嗅覚があまりに優れているので、味覚によって食事を感知する必要性が薄いことから、あまり味覚が発達しなかったのかもしれません。

犬は雑食性ですが、甘味に反応する味蕾の割合が多いため、果物や甘いものを好みます。一方、塩味を感じる味蕾は少ないようです。これは肉食動物に見られがちな傾向で、実は肉さえ食べればミネラルのバランスは取れてしまいます。ですから、ミネラルの多いものを選り分ける能力が必要なく、塩味を感じ取る能力も発達しなかったということなのでしょう。

体の特徴

犬の筋肉はオオカミ型

筋肉には瞬発力を発揮しやすい「白筋」(はっきん)と、長時間運動に適した「赤筋」(せっきん)があり、この割合が動物によって違います。犬は「オオカミ型」、つまり群れで獲物を長時間追いかけて追い詰める持久系の筋肉を持っています。

逆に瞬発力で狩りをするための筋肉を「チーター型」と呼んだりしますが、この筋肉の割合が多い動物が意外と身近なところにいます。そう、猫は「チーター型」なのです。

発達した肉食獣としての口

犬は肉食性の動物ですから、口は大いに発達しています。獲物に噛み付くための大きな口、獲物を離さないための強力な顎。肉を食いちぎる犬歯や肉を刻むための臼歯はいずれも鋭く、力強いものです。

退化した親指

犬の指は前肢に5本、後ろ足に4本で、鉤爪を有しています。4足歩行動物にありがちな形ではありますが、ほとんどの犬種で親指にあたる母指が退化しているのが特徴的です。爪は赤と白の2つの部分に分かれていますが、赤い部分には神経や血管が通っているので、爪を切るときには用心しなければなりません。

犬は汗腺がすくない

犬が口をあけて舌を出し、ハアハア息を吐いている――これは、犬の機能的な汗腺が足の裏と指の間にしか存在しないからです。激しい運動をしたときは、このように舌を出して熱気を逃すことで体温を下げようとしています。