Lesson1-3 犬の一生と成長

犬のライフスパン

犬種や生活によって異なりますが、大型犬はおよそ9~13年、小型犬は14~17年ほどで寿命を迎えます。小型犬のほうが早熟で老化はゆるやか、大型犬はゆっくりと大人になり早く老化する、という傾向にあります。

昔から言われているのは、犬は1年で人の15歳(大型犬は12歳)、2年で24歳になるというもの。それ以降は小型犬が人間の4倍、大型犬は7倍の速度で年を取っていきます。犬にとって最初の1年は、かつての日本の感覚にならえば、子供が元服するほどの期間になります。そう考えると、この時期のしつけや生活がどれほど大事か、自ずと理解できるでしょう。

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およそ生後4年で小型犬と大型犬の老化具合が逆転することが分かります。もし人間の年齢と対照させるときは、小型犬は2歳まで、大型犬は1歳までの月齢を人間換算で覚えておき、そこから1年経つごとに小型犬は+4歳、大型犬は+7歳と覚えておけば大丈夫です。中型犬は小型犬と同様に数えます。

犬の成長と発達段階

1945年、アメリカのメイン州バーハーバーにあるRoscoe B Jackson研究所で大規模な研究が行われ、犬の発達段階を新生子期(新生児期)移行期社会化期若齢期の4つに分類する考え方が提唱されました。翻訳の仕方で名称が違ったり、本によって時期が1週間ほどずれたりもしますが、おおむね次のような分類になります。

新生子期(生後0~2週齢)

生まれて間もない頃。まだ目も開いていないので、ミルクを飲んで睡眠をとるだけの生活がひたすら続きます。親は子供のお腹や排泄部分(陰部や肛門)を刺激し、排泄を促します。

この頃すでにミルクのありかを知るための嗅覚は発達していますから、子犬は母犬の存在なども間違いなく区別できるわけですね。ですから、この時期に人間の生活域の中で犬を飼っていると、子犬は人間の臭いを感じ取るので、成長した後も怖がることなく人と接触できるようになります。また、この時期の食事や生活は犬の体の発達に強い影響を及ぼします。

移行期(生後2~3週齢)

目がうっすらと開き始め、外部の音に反応するようになる頃、つまり嗅覚以外の感覚器官が機能し始める時期です。感覚器官からのインプットが増えるので脳の発達が促されるのもこの時期の特徴と言えるでしょう。

前後の脚の感覚も発達しはじめ、ヨチヨチ歩きが可能になり、排泄も自分の意思で行えるようになります。兄弟姉妹の子犬とじゃれあい、尻尾を振ってみたり、不満を表すときに鳴いたりするのもこの時期のことですね。好奇心も芽生える頃なので、人間の生活環境の中でもゴミ箱をひっくり返すなどのイタズラが始まります。

社会化期(3週齢~12週齢頃)

犬にとっては性格形成で最も重要な時期とされています。感覚器官や身体の機能がしっかりするようになり、兄弟同士のじゃれあいや周囲の散策、母犬相手のレスリングなどが始まり、こうした行為を通じて犬として必要なコミュニケーションの方法を学び始めます。

犬は狼とは異なりますが、それでもピラミッド社会の生き物であることに変わりはありません。兄弟同士の序列や相手との関係性を学び取るのはこの時期のこと。

犬にとっては極めて大事な時期ですので、社会化期前半の7週齢が過ぎるまで子犬の流通を制限するという施策を取っている国もあります。もしあなたがペットショップで生後間もない子犬を見つけたら、そのお店とブリーダーがこの社会化期をどのように考えているか、聞いてみた方が良いかもしれません。

社会化期後半は人間社会との触れ合いも視野に入れ始める時期になります。子犬が人間と最も良い関係を築きやすい時期だとも言われており、昔はよく「子犬をもらうなら生後2ヶ月が良い」といった言い方をされていました。この時期に犬を譲り受けた場合は、きちんと社会経験をつませてあげる必要があります。

犬に社会経験をつませるとは、噛み方を教えるといったしつけだけの話ではありません。たとえば、色んな犬や人間と触れ合う時間を作ること、歩道橋や踏切など、屋内飼いではなかなか体験出来ない環境を見せておくこと。そうやってこの世界のありようを教えることが大事です。ただし、この時期はまだ伝染病のワクチンが安定していません。なるべく地面は歩かせず、飼い主自ら抱っこして様々な場所へ連れて行きましょう。

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若齢期(12週齢~6ヵ月齢)

体がすっかり成長し、立派な犬の骨格に近づく時期です。まだホルモンの状態に変化は出ず、雌雄特有の行動が目立ち始める時期ではありませんが、これを過ぎると体の成長がほぼ完了します。

様々な刺激に対する抵抗を身につけさせるための最後の期間となります。もちろんしつけ自体は若齢期が終わってからでも可能ですが、社会化期や若齢期を過ぎると矯正に時間がかかるようになります。社会化期後半でも触れましたが、なるべく外の世界や多様な人・犬に触れさせておきましょう。社交的な性格に育つかどうかはこの時期の教育にかかっています。

歳の取り方や成犬になるまでの過程に触れたところで、次は犬の肉体の特徴について見ていきましょう。