ペット――特に犬を対象とするペットアロマが流行しています。
人間を対象とするアロマテラピーをペットにも適用してみようという試みは、今のところそれなりの結果を出しているようです。ペットアロマを取り入れたドッグトリートメント施術後は「犬の呼吸数が3割近く減少した」「トリートメント後にそわそわする行動がなくなった」など、高いリラックス効果が認められています。
しかし、その効果はストレスケアのみにとどまりません。被毛や皮膚のケア、ダニ対策など様々な効能が持てはやされているようです。今人気のドッグアロマは、2000年ごろから徐々に注目を集めており、現在は多くのサロンで実施されています。
そもそもアロマテラピーとは?
アロマテラピーとは、におい物質を利用した芳香療法のことです。心身の健康やリラクゼーションのために、様々な植物から抽出したエッセンシャルオイル(精油)やその原液を用います。
始まりは20世紀ヨーロッパからでした。フランスのガットフォセという科学者がラベンダーのエッセンシャルオイルを試したことから「アロマテラピー」という療法が確立し、その後も様々な研究を重ねて今に至ります。流行し始めたのは20世紀の末頃からで、治療法としてはごく新しいものと言えますが、芳香を利用した治療法それ自体は数千年前の古代エジプトの頃から存在します。

アロマテラピーの効果としては、
- リラクセーション・リフレッシュ
- 美と健康の維持
- 体や精神のホメオスタシスの維持・促進
- 健康の維持
などが挙げられます。直接的な治療ではありませんから、劇的な治療効果があるとはいきませんが、普段から続けておくと健康維持につながる可能性もあるでしょう。
犬にアロマテラピーは効果がある?
ドッグアロマには次のような効果が認められています。
- ストレスの解消
- 皮膚病の治療
- 心身ともに深いリラックス状態に入る
特にリラックス効果は高いようです。使う精油の種類によって効果には差がありますが、本質的には精神・身体の安息につながりストレスを軽減し、その結果として調子が整うことを期待するものといえるでしょう。
しかし、アロマテラピーは民間療法とはいえ医療類似行為ですので、安易に真似をするわけにはいきません。人間に使える精油であっても、犬に対して毒性を発揮してしまうものも存在するのです。
ドッグアロマの危険性
犬の嗅覚でアロマを嗅いでも大丈夫?
犬は人間よりはるかに優れた嗅覚を持っているのだから、少量のアロマでもすさまじい匂いとして感じてしまうのでは?
そうお考えになる方も多いでしょうが、以前のLessonで学んだとおり、犬の嗅覚の優秀さはその分解能力によるところが大きいのです。言い換えると、香りを緻密に分析して様々な情報を読み取る能力が高いのであって、人の何千倍も強烈な匂いを嗅いでいるわけではありません。
したがって、アロマテラピーの際も、花の匂いが濃過ぎて倒れるということはありません。問題があるとした精油成分の質と量、そして犬の健康状態や年齢でしょうか。
精油に含まれる成分の質の問題――つまり人間にとっては大丈夫なのに犬にとっては毒になる成分が含まれているか否か、に最初の問題が潜んでいます。
犬にとって危険な成分
たとえば肝毒性のあるフェノール類の精油成分、中枢神経への毒性のあるティートゥリーなど、避けるべきアロマオイルは今現在少なくとも20種類以上存在すると言われています。
中でもティートゥリーはペットケア製品としては長い歴史があり、中毒性を指摘されてなお多くの製品に含まれたまま市場に流通していますので、アロマ知識を更新していないとうっかり使ってしまう恐れがあります。
また、オイルの中には天然成分由来のものではなく、化学薬品を使った粗悪な合成品も存在します。そういったものは本来の薬効を発揮できずに終わってしまうため、もし使うとしたら信頼のおける銘柄の商品を選ぶことにしましょう。
初めて使うオイルなら、事前にパッチテストを行ってください。エッセンシャルオイルなら専用の油に0.2~1%程度の濃さになるよう希釈し、犬の体の毛の薄い部分に塗りつけます。これで2日ほど放置して、特に問題がないようなら使っても構わないでしょう。
香り成分の量
効果の穏やかなアロマを少量使う程度なら問題は生じませんが、犬は人間より動物としてはずっと小さいのだということを忘れないようにしましょう。
人間用のお菓子を与えたら肥満になってしまうこと、食パンですら塩分過剰になりかねないことを考えると、大量の精油を使うアロマテラピーも量を間違えないように気持ちを引き締めなければなりません。
アロマテラピーに使う精油は植物から抽出した揮発性の油です。バラ精油のように高額なものは5tの花から1kgの精油しか取れません。ほんの少しの精油がお花畑に匹敵する成分を有していることもあるのです。
年齢や健康状態
アロマテラピーから遠ざけておきたいのは以下のような状態の犬です。
- 生後3ヶ月未満の子犬
- 妊娠中・授乳中の親犬
- 治療中・持病のある犬
生後6ヶ月未満の子犬に対しても直接塗るべきではないでしょう。これらの時期を外し、なおかつ獣医師の判断を仰いだ上で、飼い主さんが確実に居合わせられるような状態であればアロマテラピーを行ってもよいでしょう。
猫にアロマテラピーは危険?
犬にとっては効果のあるアロマテラピーも、猫にとっては危険なものです。
猫の肝臓は犬や人間の肝臓とはちょっと構造が異なります。肝臓は解毒のできる器官ですが、猫の場合はグルクロン酸と毒物を結合させて対外に排出させるグルクロン酸抱合ができません。
本来ならば精油の成分はグルクロン酸抱合で分解され排出されるものですが、猫にはこれができないので解毒されずに体に溜まってしまい、悪影響を与えてしまいます。
したがって、アロマを炊いた部屋に猫を入れてはいけませんし、猫がいる家ではアロマを炊くべきではありません。アロマの精油を舐めてしまったら死に至ったという事例もあります。
精油は本来の成分を何倍、何十倍にも濃縮したもの……人間だって口にすれば体調を悪くするような、毒と紙一重の薬と言うべき代物です。猫に与えないのはもちろんのこと、犬に対してもアロマテラピーを実施する前に危険性の確認を怠りなく行いましょう。