犬の栄養を考える
犬は人間と同じ哺乳類。その食性についてはそもそも肉食、あるいは肉食よりの雑食といった捉え方をされますが、必要な栄養素の種類は人間とほぼ同じと考えてかまいません。炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルの5種類の栄養素に加えて水が必要となります。
必要なカロリーの求め方
1日あたりのエネルギー要求量のことをDER(Daily Energy Requirement)と呼び、これは安静時エネルギー要求量RER(Resting Energy Requirement)から逆算することで求められます。RERの計算方法は以下の通りです。
RER=体重(kg)0.75×70
体重の0.75乗を求めるのは大変ですが、最近のパソコンに標準搭載されている電卓には「√」のボタンがありますので、これを使うのが簡単でしょう。体重を3回かけた後に「√」のボタンを2回押します。たとえば体重10kgの犬だとしたら、
10×10×10=1000
√1000≒31.6227766……
√31.6227766≒5.62341325……
となり、これに70をかけた393.6389……がRERです。
これに以下の活動係数をかけてDERを算出します。
- 生後4ヶ月までの幼犬……3.0
- 生後4ヶ月~1年ほどの幼犬、妊娠授乳中の母犬……2.0
- 避妊・去勢していない犬……1.8
- 避妊・去勢済みの犬……1.6
- 肥満傾向の成犬、中高齢期の犬……1.2~1.4
- 減量が必要な犬……1.0
- 重篤疾患・安静が必要な犬……1.0
たとえば、体重10kgで生後1年以内の幼犬なら393.5×2.0で797という数値がでますね。これが普段の必要エネルギーです。言い換えれば、この犬は毎日およそ800kcal程度の食事を取ればいい、ということになります。成長期の犬や授乳中の犬には多めに食事を与えましょう。人間でいうところのスポーツマンのような使役犬の場合、係数は8.0まで跳ね上がることもありますが、一般的なペットならばそこまでのカロリーは不要です。

ドッグフードだけで生活を送るなら、DERをドッグフード1gあたりのカロリーで割り、何gのドッグフードを用意すればいいか考えます。たとえばDER800の犬に対して100gあたり200kcalのドッグフードを用意した場合、1日に400g食べさせれば良いということですね。もっとも、犬の状態によって増減の必要はありますし、ドッグフードには体重に合わせた給餌量が示されていることがほとんどですから、ただ飼うだけならそこまで深く考える必要はありません。
また、犬に必要な水分量は、摂取カロリーの単位をmlに置き換えるだけで1日の必要量となります。これも目安ではありますが、夏場はなるべく水分が不足しないよう注意する必要があります。
必須栄養素
必須アミノ酸や必須脂肪酸、という言葉に聞き覚えはあるでしょうか。これは体内で合成できないけれど体が必要としている栄養素で、犬の必須アミノ酸は10種類、必須脂肪酸はリノール酸、αリノレン酸の2種類です。αリノレン酸はペットフードによっては含有量が少ないようで、リノール酸とのバランスを考えながら与えましょう。亜麻仁油などリノール酸を多く含む油を毎食ごとに数滴与える程度で問題ありません。
ビタミンには脂溶性と水溶性の2種類があり、たとえばビタミンA、D、Eは脂溶性。B1、B2、B6、B12、C、ナイアシン、葉酸、パントテン酸は水溶性です。脂溶性ビタミンは排泄では体外に排出されないので、与え過ぎないように配慮する必要があります。
ミネラルは肉をきちんと食べていれば意外と賄えてしまう栄養素ですが、カルシウムやリン、鉄などが不足すれば体に影響が出ます。
手作りご飯に慣らすために
ドッグフードは栄養のバランスを考慮して作られていますが、どうしても個体差は出てしまいますし、容態によっても必要な栄養素は変わるはずですから、ある程度は食事内容を調整する必要があるでしょう。犬は基本的には何でも食べられますので、前のLessonで学んだ「与えてはいけない食材」とアレルギー性のある食材を避け、手作りご飯を作るのも良いでしょう。
ただし、社会化期に手作りご飯と無縁で育った場合、成長してからのご飯はなかなか受け付けてくれないことがあります。そのような場合に備え、少しずつドッグフード以外のものも混ぜて与えておくといいでしょう。
最初はドッグフードを少し減らし、代わりに消化しやすい生の挽肉を与えます。挽肉を食べ慣れてくると、今度はペースト状にした野菜を少しずつ与えていきます。そうして最後に粥状のご飯を食べられるようになったらOKです。少量から始めていきましょう。