急な事故と応急処置
もし猫が怪我をしてしまったらどうすればいいのでしょうか。
たとえば、ちょっと目を離したすきにベランダから落ちてしまったら? ストーブにくっついて寝ていたせいで火傷をしてしまったら? 不安の種は尽きないものですが、そんな時も応急処置の方法を学んでおけば安心です。このLessonでは必要な道具と応急処置のやり方をそれぞれ説明します。
いざというときのための持ち物
ペット用の救急箱を用意し、いつでも使えるようにしておきましょう。中にはいざというときの持ち物として以下の応急道具を入れておくと良いでしょう。
- ガーゼ・脱脂綿・包帯
- 絆創膏・綿棒
- ハサミ・先の尖っていないピンセット・爪切り・スポイト
- 消毒液
- カイロ・氷のう・体温計
- エリザベスカラー
急な出血に対応するためにガーゼや脱脂綿、包帯絆創膏が活躍します。それらを切るためのハサミ、日常的なお手入れにも使えるピンセットや爪切り、水や薬を飲ませるためのスポイトはいつでも使えるように常備しておきましょう。体温調節のためのカイロや氷のうは、火傷や凍傷などで急な体温の上下があったときに所持しておくと安心です。エリザベスカラーは顔を自発的に引っかかないようにするためのものですが、いざというときはダンボールや厚紙で自作することもできます。
また、犬の応急処置の項目で学んだように、猫の普段の様子を記録したチェックシートや小冊子の類を入れておくと、いざというときに参考にできます。人間が毎日血圧を記録するように、体温や皮膚の様子を定期的にメモして救急箱に入れておきましょう。
いざというときのための応急処置
猫が怪我をしたら急いで病院へ運ぶ必要がありますが、早い段階で適切な応急処置を行えば、命をつなぎとめる可能性は飛躍的に上がります。ペットを飼う場合は、応急処置の研修を受けるようお勧めされることになると思いますが、これは動物福祉の観点からも非常に重要なことです。以下に挙げる基本的な応急処置のやり方を、ぜひともマスターして下さい。
出血した場合
傷口を流水で洗い、ガーゼを当て、包帯で固定します。もし出血が多いようでしたらその上から手を置いてしっかり押さえる「圧迫止血」を試みましょう。
ひどく出血が多い場合は、心臓に近い場所をきつく縛りあげて止血をします。体の穴からの出血が続く・口の中が白いといった症状が見られる場合は内臓破裂の可能性がありますので、抱きかかえるのではなくダンボール箱などに入れて病院へ運びます。
噛み傷が見られる場合
最初に傷口の化膿を防ぐために患部周りの毛を刈り取ります。その後、流水で汚れを洗い流し、消毒液を浸した脱脂綿などで患部の消毒を行い、後は出血した場合と同様にガーゼと包帯で固定します。
骨折した場合
上手く歩けていない、足を引きずっている、足が地面についていないなど、様子がおかしい場合は骨折の可能性があります。患部に触れたら傷を悪化させてしまう可能性がありますので、丸めた雑誌や布で包んだ棒などを副木として使って患部固定を行い、速やかに病院へ連れて行きます。
意識不明の重態であれば毛布やシーツ、バスタオルなどに来るんで病院へ運びましょう。
熱湯をかぶってしまったら
火傷が広範囲に及ぶ場合は全身を冷水に浸して対応します。傷口が小さいようであれば患部に氷のうをあて10分ほど冷やしてあげましょう。
凍傷や低体温
猫は暑さに強く寒さに弱い動物です。あまり寒い場所に長く置いてしまうと凍傷や低体温になってしまいますので、凍えそうになっていたら毛布で包んで温めましょう。もし耳の先や尻尾の先が凍傷になっていた場合は、患部をぬるめのお湯につけて温めてから獣医師に相談します。
コードを咥えて感電した場合
慌てて猫に触らないようにしましょう。治療する側の人間が感電しては元も子もありません。最初はコンセントを抜き、続いてゴム手袋などの絶縁性のものを身につけたうえで猫の状態を確認します。
まず、口を開けて火傷していないかどうか確認します。もし赤く腫れていたり出血していたりしたら危険ですので、即座に動物病院へ連れて行きます。もし意識不明・心肺停止の状態に陥っているのであれば、心臓マッサージと人工呼吸を行ってから動物病院へ連れて行きましょう。
心臓マッサージと人工呼吸は、高所から落下して意識不明の重態に陥ったときなどにも利用できます。
喉を詰まらせている場合
頭部をにぎるように押さえ、のけぞらせるようにして親指と人差し指を口に差し込んで、噛まれないよう気をつけながら開きます。もし口の中に異物が見えたら手やピンセットで取り除き、見えないようでしたら両脚を持って逆さにしてゆすってあげましょう。
もし毒物を飲み込んだ場合は塩水を飲ませて吐かせることもできますが、物によっては下手に水を飲ませてはいけない場合もあるため、基本的には飲み込んだ毒類を持って病院へ向かうことになります。また、吐こうとしているのに上手く吐き出せない場合は、舌の上に塩の塊を乗せてみると、吐き出してくれることもあります。
目が充血している
目を水で洗い流します。ただし猫が目を引っかこうとしている場合は、エリザベスカラーをつける、猫の爪を絆創膏や包帯で保護するなどの対策を採ります。
人工呼吸・心臓マッサージの方法
人工呼吸法
呼吸が微弱、あるいは止まっている場合は人工呼吸を試みます。
呼吸が微弱な場合
まずは横向きで寝かせ、口を大きく開けましょう。それから舌を指で引っ張り、呼吸に合わせて出し入れします。
呼吸が止まっている場合
微弱な場合と同じように横向きで寝かせ、もし吐瀉物などがある場合はガーゼでぬぐいます。そうして口を手で押さえ、鼻の穴から3秒間息を吹き込みます。これを猫が呼吸を取り戻すまで繰り返します。
心臓マッサージ
もし呼吸も心臓も停止していたら、心臓マッサージを試みます。手順としては、まず猫を横向きで寝かせ、施術者は頭部側に座ります。それから両手で胸の左右から心臓を挟むように押さえ、親指に力を入れて「1,2」で押し「3」で離す要領で毎分30回の圧迫を行います。
この圧迫を5回繰り返したら人工呼吸を1回行いましょう。これが基本的な心臓マッサージの方法となります。