毛と皮の手入れ基礎知識
猫の体毛に関する基礎知識を身につければ、ブラッシングなどができるようになり、ペットとの間に親密な信頼関係を築けるようになります。
ここでは、ブラッシング移る前に、猫の被毛の構造や役割について学んでおきましょう。
猫の毛包と2種類の毛
毛の根元には毛包(もうほう)と呼ばれる部分が存在します。
これは人間にもあるもので、人間の場合はここから太い毛が一本だけ生えているのですが、猫の場合は複数の毛が生えています。その複数の毛の中で、トップコート、オーバーコートと呼ばれる太い毛が主毛、アンダーコートと呼ばれる細い毛が副毛です。
主毛の役割は体を保護することですが、副毛はまた違った役割を持ちます。主な役割は体温調節で、たとえば副毛の中には断熱効果の高い柔毛などが存在します。寒い地域で暮らしてきた猫にはこの毛が生えているのですが、暑い地域で生きてきた猫にはそもそも存在しない、といったケースもあります。
換毛期の存在
猫の体毛は2~3ヶ月かかる成長期と1月半~2ヶ月ほどの中間・休止期に分けられます。成長期に毛根から徐々に伸びた毛が古い毛を押しのけて、毛が抜ける。このサイクルを毛の生え変わりといい、抜け落ちた毛がいわゆる抜け毛と呼ばれるものですね。
猫の毛が生え変わる時期を換毛期と呼びますが、これは年2回ほどあって、暖かくなる3月ごろと冬支度に入る11月ごろに始まります。この時期に猫の体に触ると、それだけで毛が抜け落ちることもあり、気がつけば部屋中に猫の毛が散らばっていた、なんてことにもなります。これは病気ではないので、慌てないようにしましょう。
換毛期が発生する要因は日照時間です。猫が日の光を浴びる環境にいる場合、日照時間の増減に応じて季節を把握し、毛の生え変わりが始まるというメカニズムになっています。ただしずっと屋内だけで暮らしている猫の場合はそうなるとは限りません。日照時間が分からなければ季節の移り変わりにも気付かず、年がら年中抜け毛を撒き散らすということにもなりかねませんので、ちゃんと日光に当たれる場所を用意しておきましょう。
なぜブラッシングの必要があるのか
さて、このような特徴を持つ猫ですが、普段から清潔さを保つために毛づくろいを行っています。以前のLessonでも触れたように、毛づくろいには体臭を消すという効果もありますし、他にも毛並みを整えて艶を出すなど、猫にとってはメリットの多い行動なのです。
しかし、長毛種は毛の手入れが大変です。いくら毛づくろいが大好きだとはいっても、毛が長ければ体全体を常に綺麗に保つのも大変な手間がかかるというものです。そもそも長毛種は品種改良の末に生まれたものが多いので、猫が自然に毛繕いをするのは難しいのです。そこで飼い主がちょっとお手伝いをしてあげるわけですね。
その他にも、猫が年老いたときや病気にかかったときは、どうしても汚れが目立ってしまいますし、放置すれば毛玉ができます。ですが、年老いてきたときや病気のときにいざブラッシング、と思い立っても急にはできませんし、猫にも心の準備は必要ですから、子猫の頃から習慣として適度にブラッシングを行っておきましょう。

もしブラッシングを怠れば、体表面に毛玉ができてしまいます。猫が毛づくろいの際に毛玉を飲み込んでしまうと、その毛が腸に詰まり、毛球症の発症につながる恐れがあります。毛球症の症状は食欲低下・吐き気・便秘などで、免疫力の低下をも引き起こします。そうならないためにもブラッシングが必要なのです。
それでは、次のLessonではブラッシングのやり方を見ていきましょう。