基本的な撫で方・抱き方
猫のしつけ方について学んだところで、触れ合い方についても見ていきましょう。
こんな方法はNG!
しつけをスムーズに行うためには、褒めるための撫で方や抱き方を知らなければなりませんが、その方法にも善し悪しがあります。悪いやり方で接するとストレスを増すことにもなりかねません。
まずは猫の気持ちになって考えてみましょう。
撫でるときは低いところから
そもそも猫は高いところに住まう動物でした。高所から獲物を探し、狙いを定めて飛び掛る……そのような狩猟生活を送っていましたから、死角となる高いところから狙われるのを苦手としています。
また、自分より高いところにいる相手は、どうしても自分より優位な相手だと思い込んでしまう傾向があるようです。したがって、猫の体の上からひょいと手を出してしまうと、びっくりして逃げ出す可能性が高くなり、怯えて噛み付いてくることもあります。

もちろん大きな声を出したり大げさな身振りで迫るのも良くありません。撫でる際はなるべく驚かせないように、まず名前を呼んで低いところから手を伸ばしましょう。その際も、耳や尻尾のような敏感な場所を引っ張ってはいけません。
猫を抱くときのNGポイント
抱き方にもちょっとしたコツがあります。猫はとても繊細な動物ですから、抱く側の人間がリラックスしていない場合は恐れを敏感に察知してしまいます。それでも大人しく抱かれてくれればよいのですが、そもそも猫は抱かれるのがあまり好きではありませんし、気に入らなければ逃げ出してしまいます。これではいつまで経っても猫を抱けません。猫を抱くときは警戒心を抱かないように。
両手で猫の両腋の下をぎゅっとつかんで持ち上げるような抱き方は適切ではありません。猫にとっては肩に負担がかかる苦しい姿勢です。母猫が子猫の首の後ろ側をくわえるような運び方がありますが、あれも子猫の体重の軽さと母猫の力加減が噛み合っているから上手くいくだけで、人間が真似をすると猫の体に負担をかけてしまいます。
発情期の猫も抱かれるのを嫌がることがあります。今まで何の問題もなく抱けていたのに、急に嫌がりだした場合は何らかのサイン、あるいは体調不良の可能性があると見て良いでしょう。
正しい撫で方・抱き方
まずは体に触れるところから
撫で方については、体に触れさせてもらうところからはじめましょう。背中やお尻など、比較的警戒心の薄いところの方が難易度は低いはずです。優しく小さい声で「いい子ね」などの褒め言葉をかけながら、猫が単独ではグルーミングできない耳の裏や首の後ろ側を撫でられるようになれば、コミュニケーションの取っ掛かりとしては悪くありません。
警戒心を与えず、どっしりと構えられるように抱く
抱き方も撫で方と同じように、警戒させないのが大事です。慣れない内は猫がすり寄ってきたときに限り抱いてあげることで、ペットの自主性を尊重しましょう。抱く前に名前を呼んで、「名前を呼ばれる」=「抱っこの時間」という図式を理解してもらうのも大事なことです。おもちゃやおやつで気を引いて、膝の上に乗ってくれるようになったら慣れてきたと判断し、抱っこの練習に入ります。
まずは猫に一番優しい抱き方を学びましょう。これは猫の側面を抱えるような抱き方です。小脇に枕を抱えて落とさないように運ぶのを思い浮かべてください。
猫の左側から近づいて抱く場合、まず右手を猫の腋に添え、それから左手を後足と前足の間から差し込みお腹を持ち上げます。猫を自分の体に引き寄せて、右肘で抱え込むように体を固定。そうした後に左手をお腹から離し、後足(もしくはお尻)を下から支えてあげます。こうすると猫は体の側面を飼い主に預けるような形でゆったりと身を楽にできるのです。
次に優しい抱き方として、猫を後ろから抱え込む方法があります。ここでは米の袋を持つようなイメージで考えて下さい。まず、猫の前足の腋に物干し竿を通すように右手を入れます。それから猫の上半身を持ち上げ、今度は左手を猫の後足に添える、というやり方です。赤ん坊を抱っこするときも似たような抱き方をしますね。
撫で方・抱き方を身につければ猫とのボディタッチにも自信が出てくるのではないでしょうか。しかし、本来なら猫は抱っこされるのが好きな動物ではありません。もし抱いている最中に尻尾を左右に振り始めたら、それは猫からの「やめて」のサインです。気付かずに構い続けると機嫌を損ねてしまいますので、おかしな兆候がないかきちんと確認しながら触れ合いましょう。