Lesson10-4 猫の行動に隠された意味を読む

猫同士がお互いに取る行動をチェックしたところで、今度は猫単体の行動、ボディランゲージについてそれぞれ見ていきましょう。

猫の行動に隠された意味

伸びをする

人間は長時間に渡って同じ姿勢を取り続けると肩こりや腰痛になってしまいます。猫は比較的体重が軽いのであまり体に負担はかかりませんが、そうはいってもずっと同じ姿勢でいると血行が悪くなるものです。前足を伸ばすのは猫流のストレッチといったところでしょうか。

猫が伸びをするのは他にも気分転換などの意味がありますが、他者に対するボディランゲージとしての意味は薄いので、伸びをしたからといって何かを伝えようとしているわけではありません。

喉を鳴らす

猫はときどきごろごろという音を鳴らしますが、このメカニズムや理由については、実は解き明かされているわけではありません。猫のごろごろはいまだに謎に包まれているのです。

喉を鳴らすという行為が可能になるのは子猫の頃からで、母親の乳に吸い付くときにこの音を出します。そこから「母乳が出やすくなる」「母猫に甘えたいときに出す」といった仮説が提出されていますが、今のところ「赤ちゃん帰りした猫が甘えるときに出す」という共通見解が最もスタンダードなようです。

Lesson10-4

猫によっては飼い主になにかを要求するためにこの音を鳴らすものもいますし、2003年の研究によれば骨の強度を維持するためのものという説もあり、これと決めることは出来ません。ただし、あまり悪い意味ではありませんので、基本的には甘えられ懐かれていると判断してよいでしょう。

爪とぎ

猫の爪とぎで壁紙やカーテンが台無しに!なんて事態を避けるために、猫の飼い主の方々は爪とぎ用の板を買って、そこで爪を研ぐようしつけます。

爪とぎは猫の本能的な行動なので、そう簡単にやめさせることはできませんし、やめさせるべきではありません。かつて爪とぎは獲物を捕らえるための猫自身による手入れの一つで、常に爪を新しい状態にしておくためのものでした。したがって、これをやめさせるのはわたしたちがトイレに行ったりお風呂に入ったりするのをやめさせるようなものなのです。

もちろん他にも理由があって、その最たるものとして、爪とぎはストレス解消のための転移行動と呼ばれています。要するに、イライラしたときに板をバリバリ引っかいてストレスを発散しているのですね。もし猫が爪とぎををしていたら、そういう精神状態にあるのだと思いながら接してあげましょう。

ちなみに猫の爪は犬と違って層状になっており、爪とぎをすると脱皮するように剥がれていきます。この脱皮する爪を爪鞘(つめさや)といい、脱落するたびに新しい爪鞘が現れるという仕組みになっています。ただし、爪鞘が新しくなっても爪先は鋭いままなので、定期的な爪切りは欠かさないようにした方が良いでしょう。

後足で蹴る

猫が後足で蹴ってきたら?

飼い主のことを嫌っているわけではありません。これは猫にとってはとても大事な狩りの練習です。猫に備わった野生の本能が呼び覚まされているのです。

でも、狩りの練習ですから力は強いのです。高くジャンプすることを思えば、猫の後足の力強さは知れようものでしょう。悪意がないとはいえ、人間の体にとってはこれがなかなか手痛い一撃になりえます。もし猫が後足キックを繰り出してきたら、代用のぬいぐるみなどをおもちゃとして与えましょう

猫が噛み付くのは狩猟本能かどうか

猫が噛み付くのも後足蹴りのように狩猟本能から来る行動です。もし飼い猫に噛み付かれたら、何かが原因でストレスをためているか、獲物を前にして興奮しているか、何かしらの原因があると考えられます。

八つ当たりや恐怖感ゆえの自己防衛として噛み付くこともありますし、縄張りを守ろうとする意識から噛んでくる場合もあります。もし頻繁に噛まれるのでしたら、人と猫との間に十分な信頼関係を築けているかどうか、きちんとチェックする必要があるでしょう。

また、撫でられて気持ちよさそうにしていた猫が突然噛んでくることもあります。このとき、猫が尻尾を振り始めたらイライラが溜まっているサインですので、このような細かい仕草を見落とさないようにしましょう。

縄張り主張のためのマーキング

犬と同じように猫も尿を用いたマーキングをします。単独行動をする猫にとって、互いに関わらずに生きるためには、自分の縄張りを知らせる必要があったからです。

マーキングには性ホルモンの影響があるので、若い頃に去勢手術をしたオスはマーキングをしない傾向にあります。そうでない場合は、自分の背よりも高いところにスプレーのように尿をかけてマーキングを行います。この尿スプレーは通常の尿と違って24時間ほど強烈な臭いが残るので、普段から屋内飼いをしていればマーキングの印はすぐに見当たるはずです。

これも本能的な行動で、頻度はさほど高いわけではありません。あまりにも頻度が高いなら何らかのストレス原を抱えている可能性が高いと見てよいでしょう。

歩き方

猫の歩き方も様々ですが、ここで心を読むのに最適な例を挙げると、お尻を左右に振りながら歩くのは葛藤のサインです。これは獲物を狙うときにタイミングを測ろうとする心の現われで、狩猟動物時代の本能がにじみ出たものと考えましょう。

上半身をかがめて歩くのは警戒のサインです。身をかがめるとすぐに獲物に飛びかかれると考えると、狩りの直前で緊張・警戒しているときの動きだとうかがい知れるでしょう。

高いところへ上る

猫はもともと樹上で暮らす動物でしたから、高いところはお手の物です。獲物を発見しやすい外敵が少ないなど、猫にとってはこの上ない好条件が揃っています。

前のLessonでも触れたとおり、猫は三半規管が高度に発達していますし、肉球も着地時のクッションとしての役割を果たします。猫は高いところで暮らせるように進歩を遂げているのですね。

狭いところへ入る

高所同様、狭い場所は身を隠すのに最適です。これは敵に発見されにくい場所で休む習性を受け継いでいるからです。好奇心の強い猫はあらゆる場所へ入りたがりますから、安全や安心だけでなく好奇心を満たす場所としても猫は狭いところを必要としているのでしょう。

ただし注意しておきたいことが1つあります。体調不良のとき、猫は狭い場所に引きこもって出てこなくなることがあります。単純に狭い場所に入りたがっているのか、体調に問題があるのかは、その時々の猫の調子から判断しなくてはなりません。