Lesson9-2 猫の表情から感情を読み取る

猫は無表情ではありません

犬と比べると無表情であるといわれがちな猫ですが、本当に無表情な動物などいるはずがありません。なにしろ表情はコミュニケーションに用いられる有効な武器ですから、猫の顔つきにだって様々な意味や気持ちが込められています。

狩猟者としての猫は単独で生きていける動物です。それでも同じ種族と出会えば気持ちが通じ合いもしますし、反目することもあるでしょう。そうしたときに円滑なコミュニケーションをとらねばなりませんので、表情にはちゃんと気持ちや考えが反映されるようになっています。

このLessonでは猫の表情から気持ちを読み取るための基礎知識を学びましょう。

様々な猫の表情

攻撃的な表情

威嚇するときの猫の表情は意外と多彩です。自然にしているときは耳をピンと立ててリラックスした状態ですが、この耳の向きと瞳孔、声などに注目すると段階的に攻撃的な意志が読み取れるようになります。

攻撃にも積極的攻撃防御的攻撃の2種類があり、平たく言えば獲物を狩ろうとするときの攻撃が「積極的攻撃」、自分の身を守ろうとするときの攻撃が「防御的攻撃」にあたります。

傾向としては、積極的攻撃の気持ちが高まるほど、耳は前ではなく横を向くようになります。防御的攻撃の意志が強まると、耳が平らになったり後ろに引かれたり伏せられたりします耳を隠すように動かすのは傷つけられるのを恐れるからで、更に防御的攻撃の意志が高まった場合は威嚇の声を出すようになります。

また、積極的・防御的を問わず攻撃性が高まるほど瞳孔が狭まる傾向にあります。

親愛の情

親愛の情を判断するためには、顔の中でも特にヒゲの動きに注目するのが良いでしょう。

ヒゲがピースサインのように上を向いているのは(そこまで極端な角度ではなく、斜め上くらいです)、嬉しいこと、楽しいことがあったと感じたときのサインです。美味しいものを食べたり好きなおもちゃで遊んでいるとき、飼い主に褒められたときなどにこのような状態になります。尻尾が立っている場合は更に高ポイントと考えましょう。

逆にヒゲが下を向いている場合は、リラックスしていると考えられます。単独で狩猟生活を行う猫が情報収集器官であるヒゲを下げるのは、警戒する必要がないとき、つまり安心しているときです。また、退屈したときもこのような下げ方をする場合がありますので、遊んで欲しいというサインである可能性も考慮するとよいでしょう。

警戒・疑問もヒゲから分かる

警戒しているとき、猫は大切な感覚器官であるヒゲを精一杯横に広げます。つまり、カニのように横に広がっている場合、何か猫の周りで落ち着かないことが起きている蓋然性が高いのです。もし危険なものが存在すると分かれば、猫はそのまま攻撃的な体勢に入ります。

猫の視覚が特殊であることは以前のLessonでも述べた通りで、猫はすぐそばのものをはっきりと見ることはできません。したがって、目の前に興味の対象があるときはヒゲを前方に伸ばします。くわえて、情報を集めようとして鼻をヒクつかせることもありますので、興味を示していることが非常に分かりやすくなっています。

笑顔は例外

猫は単独で生きる動物ですから、他の猫とコミュニケーションを取ることはあっても、笑顔を浮かべることはありません。友好的な存在であることをアピールするためには他の仕草や行動で伝えます。

「でも、うちの猫はたまに笑顔を浮かべていますよ」という方もいらっしゃるでしょうが、笑っているように見えるのは、フレーメン反応などの反射的な動きがたまたま笑顔の形になっているだけ、というケースがほとんどでしょう。

臭いに反応して唇を引き上げる反応をフレーメン反応と呼びます。猫にはフェロモンを受容するためにヤコブソン器官という嗅覚器官が備わっているのですが、これが口の中にあるのですね。だからフェロモンを嗅ごうとすると必然的に口を開けることになり、その結果として笑っているように見えるわけです。

ちなみに、靴下を嗅ぐのは飼い主のフェロモンをチェックしているからです。笑ったように見えても、けっしてその臭いを嫌がっているわけではありません。