Lesson8-4 猫の体の特徴

猫の感覚器官について

猫の五感の鋭さは、犬とはまたちょっと違っています。犬は嗅覚、聴覚に優れ味覚視覚触覚はさほどでもなかったはずですが、猫はどうでしょうか。

猫の目は暗いところでも良く見える

猫は視力の悪い動物だといわれており、その視力は0.2~0.3程度だと考えられています。動かないものを見る力はさほどではなく、2m~6mほど離れたところが最も良く見えるようです。ただし、もともとは狩猟動物なので動くものを認識する力は強く、サッケードと呼ばれるすばやい眼球運動を得意としています。垂直運動なら1秒間に250度水平運動なら1秒間に150度というスピードで眼球を動かせるのです。

猫の目にはタペタム輝板)という反射層が備わっており、人の目より40%ほど効率よく光を集めます。瞳孔は人の約3倍まで膨張し、光の感度はおよそ6倍以上。夜行性ではありませんが、夜明けや日没頃に活動するため、暗い範囲で動くのに適した感覚器官を持っているということなのでしょう。

ただし、猫の網膜には錐状体がほとんどないため、色の識別は苦手としています。特に赤色は捕らえることが出来ず、青と黄色の世界に生きているといえましょう。

嗅覚は人間以上

ただし、犬ほどではありません。臭いを感知する嗅細胞が集まる嗅上皮は20平方センチメートルと、人間のおよそ10倍ほど。犬の7分の1ほどです。また、神経線維の束である嗅球はおよそ6500万個であり、これは人間より1500万個ほど多い計算になります。参考までに、警察犬として活躍するジャーマンシェパードには2億個の嗅球が存在します。

嗅覚の使い方は主に獲物の探索食べ物・外敵の臭いの嗅ぎ分け、それに縄張り確認でしょうか。群れを作らない動物である猫にとって、単独で判断を下すための材料は大いに越したことはありません。

犬より優れた聴覚

個体や品種によってだいぶ差がありますが、猫の可聴域は40~65000Hzと言われており、低音域の聞き取りは人より苦手なものの高音域、人間の聞こえない領域の音を聞き分ける能力に優れています。実験によれば100000Hzの高音にも反応を示した猫もいるようです。

Lesson8-4

猫は暗がりで狩りをする動物なので、草むらの中を歩く小動物の足音を聞き分けようとした結果、そのように発達したのでしょう。高音域を聞き取りやすいのは主な狩猟対象であるネズミの鳴き声の高さゆえかもしれません

猫のヒゲは高性能センサー

猫のヒゲといえば口元にあるものだけを想像してしまいますが、他にも頬、目の上、前足首の裏などに生えています。猫のヒゲには知覚神経が豊富に含まれているため、空気のわずかな振動すら感じ取れるようになっています。気圧や気流の変化も感じ取れますし、ヒゲの先が0.1mm動いたのさえ分かるほどには敏感です。狩人として、狭いところを動き回るために高性能センサーを発達させたのでしょう。

猫の皮膚には15種類の受容器が存在します。それらは、皮膚に加わる機械的な刺激を感知する機械受容器、皮膚の温度変化を感知する温度受容器、皮膚に加わった機械的・化学的な侵害を痛みとして伝える侵害受容器の3種に大別することができます。

苦いものはすぐ分かる。甘味は知らない

猫の味覚は毒物を避けるために苦味を強く感じ取れるように発達してきました。狩猟者として生きていくためには、苦味酸味をきちんと分類する必要があったのです。しかし、人間ほど細かく分類されているわけではなく、味自体は大雑把にしか感じ取れません。このあたりは犬と良く似ているといえるでしょうか。

また、驚きの事実として猫は甘味を感じません。砂糖に反応するセンサーがほとんど含まれていないのです。これは、犬が肉以外にも果物や補助的な食料を食べてきたのに対し、猫が肉ばかり食べてきた、という食性の違いから来ているのではないかと言われています。猫は甘いものを知らないのです。

体の特徴

猫の筋肉はチーター型

筋肉には瞬発力を発揮しやすい「白筋」(はっきん)と、長時間運動に適した「赤筋」(せっきん)がある、という話は犬の項目でもしました。猫は瞬発力で狩りをする孤独な動物ですから、「オオカミ型」の犬より白筋の割合が多い「チーター型」なのです。

狩猟者として発達した体の各器官

犬と猫の大きな違いに、「犬は爪を出しっぱなしだが猫は爪を出し入れできる」というものがあります。この違いは足音を殺して獲物に近づく必要があるかどうか、というところから来ているといえるでしょう。

また、猫には鎖骨がありますが、犬には鎖骨がありません。猫は森で、犬は平原で暮らしてきた動物なので、その違いが意外なところに現れているのです。鎖骨があると抱きつく腕の動きが可能になります。つまり猫は獲物に抱きつけますし、木登りができるのです。

臭いも重要です。犬には体臭がありますが、猫はさほど臭くないのです。身を潜めて獲物を狙う狩猟者として、臭いをさせるような個体は淘汰されていったということなのでしょう。

犬に対して猫はほとんどの歯が尖っている、というのもまた違った特色のひとつです。

猫の運動神経

猫は高いところから落ちても大丈夫、という話を聞いたことはあるでしょうか。猫の三半規管は非常に優れており、落下が始まってからすぐ態勢を整えられること、ムササビのように体を広げて落下速度を落とせること、肉球が衝撃吸収剤としての役目を果たすことなどから、高所から落ちても無事であることが多いのです。もちろん失敗すれば骨折などは起こり得るのですが、怪我の割合はさほど高いわけではありません。

猫の運動神経は非常に高いレベルでまとまっています。猫を飼うときは、愛玩動物以前に森で暮らす狩猟者なのだということを念頭に入れておきましょう。