Lesson5-4 毛と皮の手入れ――ブラッシング

ブラッシングでペットとコミュニケーションを

前回のLessonで見てきたように、毛と皮のチェックは頻繁に行ってください。そうして犬の体調にどうやら問題がないらしい、と確認できれば、次の段階に進みます。そう、このLessonではトリミングの大切な技術のひとつ、ブラッシングについて学びます。

その前に、まず毛の種類を知ろう

日本では柴犬を飼う家庭が多かったため、夏毛や冬毛に生え変わることをご存知の方も多いと思われます。しかし、実は犬種によって被毛の種類にも色々あって、生え変わらない犬だっているのです。

大雑把に分けると、被毛が一重のシングルコート、被毛が下毛(アンダーコート)と上毛(オーバーコート)で二重になっているダブルコートがあります。それぞれの特徴を明記しましょう。

シングルコート

春や秋の毛の生え変わりがありません。もともと温暖な気候の土地に暮らす犬を改良した犬種に多く見られる特徴で、ヨークシャーテリアやプードル、マルチーズなどがこれに該当します。ちなみに、実を言うと被毛は二重構造になっているのですが、上毛がほとんど存在しないため、ダブルコートと区別するためにシングルと呼ばれているようです。

お手入れは比較的楽で、抜け毛も少ないため、ダブルコートの犬種よりは手間がかかりません。特に短毛種は楽ですので、定期的にブラッシングをするだけでもなかなか効果的です。長毛種は毛玉が出来ないようになるべく日常的にブラッシングをしてあげましょう。

ダブルコート

被毛が下毛と上毛の二重になっています。もともと寒冷地で暮らす犬を改良した品種に多く見られ、日本でも有名な柴犬や秋田犬、古い犬種であるスピッツ、チワワやコーギーなどもこのダブルコートです。

お手入れはもちろん行う必要があり、特に毛の生え変わる換毛期には、抜けるはずの毛が取れずに毛玉となることがありますので、出来れば毎日ブラッシングを行い、抜け毛を丁寧に取ってあげる必要があります。

これらの特徴を頭に入れた上で、ブラッシングのやり方を学んでいきます。

ブラッシングの前に

道具を用意する

ブラッシングの前にまずはブラシを用意します。ここで大事なのは犬種や毛の種類にあわせたブラシを選ぶこと。間違ったものを選ぶと、ケアをしているつもりで皮膚を傷つけてしまっていたという事態に陥ってしまうかもしれません。

最初に習うべきブラッシングの基本は、スリッカーブラシコームを使ったものになります。スリッカーブラシは持ち手の先に長方形のブラシがついているもの、コームは長方形の櫛の形をしていますが歯と歯の間隔が広い部分と狭い部分とに分かれています。

Lesson5-4

他にもピンブラシ、獣毛ブラシ、ラバーブラシなどの様々な種類がありますので、それぞれの特徴を覚えておきましょう。

スリッカーブラシ

主に長毛種の毛のもつれや短毛種の無駄毛の処理に使います。ハードタイプとソフトタイプが存在し、ハードタイプはピンが硬いので、強引に使うと犬の皮膚を傷つけてしまうことに注意しましょう。ソフトタイプは肌触りもよく、毛の柔らかい犬に使います。

コーム

金グシです。歯と歯の間隔が広い部分と狭い部分に分かれており、軽めの毛の持つれを直したり、毛並みを揃えるのに使用します。スリッカーブラシで大まかなブラッシングを行ってからコームで整える、というのがブラッシングの基本です。日常のお手入れなら、コームで毛並みを整えるだけでも充分な効果があります。

ピンブラシ

ゴムの土台に先端の丸いピンが剣山のようについているブラシです。毛を綺麗に伸ばしたいという人向けで、先端が丸まっているのであまり皮膚を傷つけずにお手入れをすることができます。長毛種向け。また、スリッカーブラシでは不安という初心者の方にも向いています。

獣毛ブラシ

ブラッシングの仕上げや、短毛の犬種に対して用いるブラシです。主に猪の毛(固い)と豚の毛(柔らかい)の2種類があり、静電気が発生しにくいのが特徴。毛艶が出て大変綺麗な仕上がりになります。

ラバーブラシ

これは短毛で毛が抜けやすい犬種向けのブラシです。ゴムで出来ているので皮膚に優しくマッサージにもなると言われていますが、マッサージのつもりでこすり付けると皮膚を傷めてしまいがちです。これは消しゴムで自分の肌をこすると考えると分かりやすいでしょう。なるべく、毛の表面だけをさらっとブラッシングするようにしてください。

ブラッシングのタイミングは?

ブラッシングは汚れをとるためのものでもありますので、散歩が終わった後にやるのがお勧めです。ただし、常に散歩に出るとは限りませんし、落ち着いたとき、リラックスしているとき、体に触れても大丈夫そうなときであれば、さほどこだわる必要はありません。

もちろんブラッシングを行うときは、毛が飛び散ってしまってもいいようにきちんと部屋を片付けておきましょう。

ブラッシングの前に異常を見つけたら?

Lesson5-3で毛と皮の健康状態を調べる方法を学びましたね。いざブラッシングをしようとなったときにしこりや皮膚炎を発見した場合はどうすればいいでしょう?

正解は、ブラッシングをしない。

肌が傷ついて敏感になっているときに、無理にブラッシングをすると症状を悪化させてしまう可能性が高いのです。わたしたちだって病気のときにお風呂に入らなかったりしますよね。もし悪い兆候を見かけたら、毛並みを整える前に動物病院などを訪れるべきでしょう。