Lesson5-3 毛と皮のお手入れ、その前に

被毛のチェックをしよう

本来、犬の毛は大変つややかで触り心地の良いものです。しかしひとたび病気になってしまうと、肌は荒れ毛の生え方もまばらになり、ひと目で体調が悪いのだと分かります。犬の毛は健康を調べるための大切なバロメータと言えましょう。

このLessonでは、最初に毛の状態をチェックする方法を、次に皮膚の状態を確認する術を学びます。毎日体の様子を見てチェックすることで、病気の早期発見に努めましょう。

毛の状態チェック

脱毛

脱毛にも種類があり、なかでも部分的に毛が抜けている場合は様々な原因が考えられます。ノミやダニがいる場合、アトピー性の皮膚炎、アレルギーなど、部屋の清潔度合いが反映されているものもあるので、掃除が行き届いているかどうかチェックする必要があるでしょう。

胴体の広い範囲に脱毛がある場合は、薬物や遺伝が原因の天疱瘡やホルモンバランスの崩れから来ている可能性があります。胴体に左右対称の脱毛がある場合は、副腎皮質ホルモンの過剰分泌や、副甲状腺ホルモンの機能低下を疑ってください。

つやが悪い

副腎皮質ホルモンの過剰分泌の可能性もありますが、寄生虫症とも考えられます。寄生虫の種類は驚くほど多く、中にはフィラリアなど放置すると死に至る種類もいます。なるべく早い段階で獣医の診察を受けましょう。

べとべとする

犬の皮膚にも常在菌が存在します。人間にとっての腸内細菌のようなもので、病原性のない微生物だとお考えいただければ分かりやすいでしょう。ですが、中には突如として病原体と化してしまうものがあります。

マラセチアは犬の体の至るところにいる酵母です。皮脂腺から出る脂質を栄養分として、普段は一定のバランスを保ちながら存在していますが、栄養の偏り、ホルモンバランスの乱れなどが原因で急に繁殖してしまうことがあります。そうなると、皮膚の新陳代謝が活発になり、異様に皮膚がべたべたするフケが増えるなどの症状が発生します。ビタミン剤の投与などが効果的な場合もありますので、症状の軽い内に専門家と相談しておきましょう。

続いて、皮膚の状態チェックに移ります。

皮膚の状態チェック

毛の様子を見たら次は皮膚を調べてみます。指で体毛をめくってみて、おかしなところがないかどうか確認してみてください。

  • しこり
  • 腫瘍
  • フケ
  • 腫れやただれ、炎症
  • かさぶた
  • 色素沈着

基本的には毛と同じ症状を疑います。ダニやノミ、寄生虫の存在、ホルモンバランスの乱れ、アレルギー、アトピー、免疫異常など様々な原因が考えられますが、中には性ホルモンの異常が原因で卵巣の摘出手術が必要な症状もあります。

Lesson5-3

皮膚が広範囲に渡って赤く腫れている場合は、火傷や骨折を疑いましょう。また、寒い時期以外なかなかお目にかからない例ですが、凍傷になってしまうこともあります。軽い段階では赤くなるだけですが、症状が進むと水ぶくれができたり、皮膚の変色(黒ずむ)が観察できるようになります。重度の凍傷であれば皮膚が壊死している可能性もありますので、どうにもおかしいと思ったら動物病院へ連れて行きましょう。

早めの発見、早期治療が大事です。毎日の毛と皮のチェックで異常を調べるのは、飼い主の責務のひとつと心得ましょう。