耳のケアで病気を防ごう
いよいよ実践的な内容に入っていきます。このLessonでは、普段のお世話の中に取り入れられるお手入れの数々を学んでいきましょう。
犬のケアを実施するには、まず犬に触れても大丈夫というところまで信頼関係を築いておく必要があります。Lesson3-3で学んだボディコントロールを活用し、犬の触れて欲しくない部分であってもお手入れできるようにしておきましょう。
また、この講座では水分を含むものを利用します。水恐怖症や狂犬病でない限り、犬はあまり水を嫌がりませんが、かといっていきなり水を張ったお風呂に放り込んではいけません。最初は少量、湿らせる程度から始めて徐々にならしていくとスムーズに行くでしょう。
犬の耳の構造
最初に犬の耳の構造についてご説明します。
垂れていたりピンと立っていたり、耳にも様々な種類がありますが、その構造に大きな違いはありません。
耳は外耳・中耳・内耳で構成されています。普段わたしたちが触っているような、外側に出ている部分を外耳と呼びます。外耳の内側、体毛がほとんど生えておらず肌の色がはっきりと分かる部分を耳介といい、そこから耳の内部へ行くにつれて耳の穴は狭まっていきます。外耳道――垂直耳道、水平耳道を通り抜けると、鼓膜や鼓室胞からなる中耳へ至り、その奥に聴覚や平衡器官をつかさどる内耳があります。
聞きなれない分類かもしれませんが、子供の頃に中耳炎という病気にかかったことのある方はご存知かもしれませんね。人間の耳にも中耳があり、そこに膿がたまると急に痛み出したりして大変なことになりますが、実は犬も中耳炎にかかります。慢性的な状態になると鼓膜を切開することになりかねません。注意深く耳のケアをしながら早めに対処できるようにしておきましょう。
頻度に関しては、耳のチェックは毎日、耳掃除や毛の処理は半月に1度を目安とします。
耳の観察ポイント
犬がかかりやすい耳の病気について触れながら、早期発見のためのポイントをチェックしましょう。大事なのは、色と臭い、そして形です。
耳疥癬
耳疥癬(じかいせん)とは、耳の中でダニが繁殖してしまった状態のことを言います。犬にとってダニは天敵のようなもので、普段は体毛についたダニの対策ばかり考えてしまいがちですが、耳の内側を狙う種類のダニも存在します。
注意すべき点は、耳が部分的に黒ずんでいたり、変なにおいがしていないかどうか。ダニは犬の体液を餌とするので、耳の周りに垢がたまっていたり、傷跡があったりする場合も要注意。耳をチェックする際は、これらの特徴から耳疥癬の前兆が出ていないかどうか確認します。
外耳炎・中耳炎・内耳炎
これは耳の外耳、中耳、内耳がそれぞれ炎症を起こしている状態です。清潔にしていない、ダニや寄生虫が住み着いてしまった、細菌にやられてしまった……といった場合に炎症が起こります。
原因を特定するのは難しいのですが、清潔にするだけである程度は発症を防ぐことができます。その際は特に外耳炎に注意してください。外耳炎→中耳炎→内耳炎と外側から内側に向けて炎症が進んでいくことがあるので、耳介の色合いや臭いはしっかりチェックするようにしましょう。
耳血腫
片耳だけ垂れ下がる犬を見たことがありますか?
遺伝の結果、喧嘩の傷など様々な理由がありますが、ひょっとしたらその犬は耳血腫なのかもしれません。打撲の傷や血液の異常などで、耳介に血液などが溜まってしまって膨れ上がる状態を耳血腫と言います。
耳血腫の場合、下手に触れないのがコツ。余計に悪化してしまうからです。軽度なら注射による血抜きや抗生物質の投与で収まることもありますが、重度の耳血腫であれば切開して余計な液体を排出する必要があります。
耳が膨らんでいるので比較的気がつきやすいのですが、小さな血豆のような状態ですと、つい見過ごしてしまいがちです。小さいうちは対処も楽なので、常に耳をチェックして早期発見に努めましょう。
耳掃除のコツ
耳掃除にはペット用の綿棒や脱脂綿を用います。これを水やイヤーローションで湿らせて、耳の周りを拭くのが基本的なお手入れとなります。耳の大きさ次第では、指に巻きつけて自分の指でお手入れしても構いません。犬がちゃんと受け入れてくれるようなら、耳の中も少しずつ拭けるようにステップアップしましょう。
拭き方のコツは力を入れすぎないこと、そして耳介の汚れを耳の奥に押し込まないことです。汚れは耳道や鼓膜を傷つけて炎症や化膿、その他耳の病気の原因となりますので、押し込まないことを意識しながら丁寧にケアしてください。
次のLessonでは爪のケアについてお話します。