猫の食事は人間と同じでよい?
前回までのLessonで猫が1日に必要とするカロリーや、与えてはいけない食材について学びました。今回はその応用として、猫の食事を手作りする際の注意点について学んで行きたいと思います。
猫にとって必要な10の栄養素とは
たんぱく質、炭水化物、脂質などは言わずもがなですが、これらは普通に食事を作れば十分な量を摂取できるため、ここでは食事を作る際に欠けてしまいがちな栄養素について説明します。犬のLessonでは体内で合成できない必須アミノ酸について学びましたが、ここではもう少し広い範囲に渡って説明します。
ビタミンA
猫に必要なビタミンの1つです。多くの動物は緑黄色野菜に含まれるβカロチンからビタミンAを合成できますが、猫はなぜかこの合成ができません。捕まえたネズミがビタミンAを含むからという説もありますが、まだはっきりしたことは分かっていないようです。この栄養素が不足すると皮膚や粘膜の状態が正常に保たれず、免疫機能に悪影響が出ます。
豚や鶏のレバー、あんきもなどに多く含まれていますが、ビタミンAは脂溶性ですのでなかなか体外に排出されません。あまりレバーを食べさせ過ぎると今度はビタミンA過剰症に陥ってしまうので注意しましょう。
リノール酸
これは犬のところでも触れましたが、猫にとっても必須脂肪酸の1つです。ごま油や大豆の油に含まれるので、ゴマを少々炒って食事に混ぜたり、植物性の油を使って料理したりすると良いでしょう。
リノール酸は血管を正常に保ち動脈硬化などを予防する働きを持っていますが、繁殖機能を正常に保つのにも使えます。また、皮膚や被毛を健康に保つ効果もあります。猫の表面をガードする栄養素だと考えてください。
α-リノレン酸
これも必須脂肪酸の1つで、リノール酸とよく似て植物性の油に含まれます。ただし、加熱すると酸化してしまう栄養素でもあるので、もし油を使う場合はご飯に少量垂らしておくのが良いでしょう。亜麻仁油、菜種油、オリーブ油、くるみ、国産大豆などに含まれます。
アラキドン酸
必須脂肪酸の1つです。ビタミンAと同じように多くの動物はγ-リノレン酸からアラキドン酸を合成できますが、猫には同じことができないため食事から摂る必要があります。豚のレバーやサザエ、ひじき、伊勢えびやわかめなど、海産物に豊富に含まれています。
タウリン
有名なタウリンもまた必須アミノ酸の1つです。タウリンが不足すると失明・生殖能力の低下・心筋症などにつながってしまうため、これが豊富に含まれる肉類や魚類を摂るようにします。アジなどの魚類、ハマグリやホタテなどの貝類、タコ、ヤリイカなどの軟体動物を食べると良いのですが、生のイカの内臓にはビタミンB1を分解する酵素が含まれていますのでやり過ぎには注意してください。
アルギニン
これも必須アミノ酸の1つです。筋力強化や脂質の代謝促進に効果があります。猫がこの必須アミノ酸を欠かした場合、アンモニア中毒になる可能性が生じるので注意してください。
さば、高野豆腐、ゴマ、ナッツやアーモンドの類に含まれますが、アーモンドの中に含まれるアミグダリンは青酸化合物であり、猫の体内の酵素と結合して呼吸困難を引き起こすこともあります。ただし、食用のアーモンドにはこのアミグダリンが含まれておらず、熱にも弱いので、加熱して与えれば大丈夫でしょう。
ナイアシン
糖質や脂質、たんぱく質といったエネルギーの代謝に欠かせない水溶性ビタミンの1つです。人間は体内で合成できるのですが、猫にはこれができません。熱には強いので調理しても分解されませんが、手作り料理を猫に与える際に恒常的に不足しやすい忘れがちな栄養素です。かつおやレバー、鶏むね肉、鶏もも肉、サワラ、イワシ、ブリなど濃厚な味わいの鶏肉・魚肉を与えましょう。
ミネラル
カルシウム・リン酸・亜鉛・鉄など、人間にとっても不足しがちな栄養素です。ビタミンの働きを補助し、骨や筋肉の形成に一役買ってくれます。ひじきや納豆、海藻類を積極的に摂っていきましょう。
食物繊維
栄養があるわけではありませんが、便通を良くするため必須といってよいものです。種類としては、野菜に含まれる不溶性食物繊維と海草やこんにゃくに含まれる水溶性食物繊維の2種類があります。わたしたちも普段は水溶性食物繊維ばかり摂りがちですが、そうならないよう、猫にも海苔やわかめなどを適切に与えるようにします。
水
これは必須です。なるべく水分を摂るようにして老廃物を排出しやすくできるよう努めましょう。お粥やおじやにしたり、水分の多い野菜を使うとよいでしょう。
ご飯を手作りする際のコツ
もしキャットフードに頼らず猫のご飯を作るのであれば、何よりもまず危険な食材を省くことを意識し、そして栄養価の不足に気をつける必要があります。獣医師ですらきちんと栄養素を満たした食事を作れる者は10%に満たないという調査もありますし、最初はキャットフードの補助に間食を作る気持ちで始めるとよいでしょう。
最初からあまり手の込んだものを作るのも大変ですし、まずは肉と野菜の豊富なおかゆを作ってみましょう。理想的な肉魚類:野菜類:穀類のバランスは7:2:1です。これを満たすように食材を選定し、生では食べられない食材に火を通したのちフードプロセッサーにかけます。後はとろっとした材料をほぐして少量のおかゆとあえるだけでOKです。

与え方にもちょっとしたコツがあります。せっかく作ったご飯を食べてくれない、なんてことはしばしばありますが、与え方を変えるだけで食べてくれる可能性もあります。まずは量を少なくして小分けにして小皿に盛って与える、ペースト状にして与える、などの方法を試してみましょう。猫によって好きな盛り方や形状に違いがありますから、自分の猫がどのようなものを好くかあらかじめ知っておくと、嫌いなものでも食べてくれるようになるかもしれませんね。