Lesson7-2 急な事故が起こったとき

続いて、急な事故や応急処置の対策について学びましょう。

事故への対策

保険には入りましたか?

金銭面の話から入りましょう。愛犬の事故を防ぐのは飼い主の義務ですが、ひとたび何か起こればそこから先はお金が絡んできます。ペット保険に加入しておくに越したことはありません。

保険会社には損害保険を扱う損害保険会社と小額短期保険を扱う小額短期保険会社があり、前者は高額の代わりに様々な保険を扱い、後者は比較的安い代わりにリターンも少ない保険しか扱っていません。

保険金給付のタイミングや自己負担割合、それに補償対象も各保険でまるっきり違ってきます。なるべく自分の愛犬にあったものを選ぶようにしましょう。

急な事故とその応急処置

まずは正常値の記録から

異常を感じ取るためには、まず正常を知らなくてはなりません。そこで、心拍数血圧呼吸体温の四つの項目については、常にどのような状態にあるか記録しておきましょう。病院によっては、応急処置セットに通常値を記録した紙を入れておくよう指示を出すところもあります。

心拍数は一分間で60~140拍が目安で、体が大きければ大きいほど減少する傾向にあります。スポーツ選手の方が心拍数が低いのと理屈としては似ていますね。心臓の相対的な位置は人間とあまり変わらないので、左前足の肘を目印に心臓の位置を特定し、脈拍を測ってください。

犬の血圧を計るためには腕輪を巻きつけて測定する必要がありますが、家庭でそのような道具を揃えるのは大変です。そのため、簡易血圧チェック法として「キャピラリテスト」というものがあります。これは犬の歯茎をぐっと指で押し、白くなったらすかさず離し、元の赤色に戻るまでの時間を計る方法です。2秒以内に戻れば正常、2秒以上は危険と考えられます。

呼吸については1分間におよそ10~35回と言われています。子犬は20回前後、成犬は14~16回程度です。ただし運動後などは呼吸が乱れてしまいますので、正確に計測する場合は寝入った後のお腹の上下動を見ましょう。上下動を1回とカウントし、平常時は1分に何回呼吸するか記録しておきます。

体温については犬用の体温計を使って計るのが一般的ですが、もちろん常日頃から抱っこして微妙な体温の変化に気づけるようにしておくのも大切なことです。

急な事故別応急処置

突然の事故と怪我の一覧を載せておきます。ここで紹介するのはあくまで応急処置の方法ですので、処置が終わり次第獣医さんと連絡を取ることを忘れないようにしてください。

Lesson7-2

誤飲

犬が誤っておかしなものを飲み込んでしまったら、速やかに吐き出させます。ただし、吐き出させるための命令を教えていない場合、そうするわけにもいきません。飲み込んだ直後であれば、5~20g程度の食塩を舌に置くのも手です。飲み込んだものを吐き出してくれる可能性があります。

出血

多少の切り傷なら生命の危険に直結することはありませんが、感染症の危険があります。処置としては異物を取り除き、多量の水で傷口を洗浄、その後消毒液や過酸化水素水で傷口を消毒します。もし大きく体が裂けていた場合は縫合する必要があるかもしれません。消毒後、包帯やガーゼを巻いて患部を心臓より上に上げましょう。

骨折

局所的な腫れ、脚の角度が異常などの状態は脱臼骨折のサインです。脱臼の場合は元に戻すのが難しいため、速やかに獣医師と連絡を取りましょう。骨折の場合、皮膚の上から患部を押したりせず、患部に最も近い関節に紙や布で作った簡易副木をあてて、痛がらない程度のきつさで固定します。

火傷

火傷は深さによって重症度が異なります。表皮でとどまっている火傷ならI度、真皮ならⅡ度、皮下組織ならⅢ度、それ以上深いところまで到達していたらⅣ度と呼ばれます。応急処置としては患部を冷やして炎症の悪化を防ぐ程度のことしかできませんが、もし毛が抜けて地肌が露出していたり水ぶくれが出来ていた場合は、ただちに獣医へ連絡しましょう。

凍傷

寒い場所に置き去りにしたり、ドライアイスなどの冷たいものが当たりっぱなしだったりすれば、皮膚の表面温度が一気に下がって体組織が破壊されてしまいます。基本的な処置は暖かい部屋に連れて行くこと、それから人肌よりちょっと高い程度のぬるま湯で患部を温めてあげることです。

感電

電気コードをかじられたときの対策を充分にとっていない場合、たまにコンセントの近くで飼い犬がぐったり倒れているのを見つけることがあります。この場合は感電している可能性がありますので、ゴム手袋をしてゆっくりと犬の体を横向きに寝かせてください。けっして素手で触ってはいけません。また、犬の帯電が解けている場合は心肺蘇生術を試みてもいいでしょう。

心肺停止した場合は

人工呼吸、および心臓マッサージを試みます。ただし、これは我流でやってしまうと危険ですので必ず医師や専門家の講習を受けてください

人工呼吸

まず、犬を横向きに寝かせます。それから気道を確保し、空気の出入りを防ぐために犬の口を押さえ、3~4秒に1回の割合で鼻から息を吹き込みます(マウス・トゥ・ノーズ)。これを一分ほど続けて、呼吸の兆候があるかどうか確かめましょう。

心臓マッサージ

犬を横向きに寝かせ、心臓の位置に手を当てます。小型犬の場合は心臓の上に直接中型~大型犬は胸が一番膨らんでいるところに手を当て、1分間に100~120回、要するに毎秒2回程度のペースで胸部を圧迫します。これを2分ごとに交代しながら繰り返します。

ここまで習得すればいざというときも安心です。次は犬が健康的に暮らせるような食事について考えていきましょう。